空太のそら言

隠れオタクのぐうたら

「黄昏ホリック」まじめにレビュー

時間があったら何度も聞いています。millstonesさんの黄昏ホリックというアルバムです。ボーカロイドなので、大丈夫な人は是非聞いてみてほしい。




以前のファーストインプレッションで「サーバ室のような空気」と表現したが、それは変わらない。(今見たら「マシン室」って書いてあった。サーバルームね)
うちの会社のサーバルームは(余所はどうか知らないが)徹底した温度空調管理がされるがゆえの独特の匂いがする。系統としては、新品の冷蔵庫や新車のそれに近い。無菌室もこんな感じかも知れない(未体験)。
そこはひとつの完璧な世界。他の物が入り込む隙間がない。
しかし、そこには観測者としての人間が入る。すると、それまで保たれていたバランスが崩れる。そして崩れた状態で安定しようと世界が変わる。
完璧から少しずれた、その状態での完璧。それが「サーバ室の空気」であり、私が考えるこのアルバム全体のイメージだ。
好きか嫌いかと言われれば、当然好きであるし、尊敬も畏怖も抱いているのであります。


それでは一曲ずつレビューとかしちゃおうかな。
ちなみに音楽の詳しい話は全くできません。ただの感想なので期待しないでね!




1
Soaring into the sky
始まりの曲ってかんじ。イメージは日の出。
単純なメロディに、音色の違う音が次々と登場する。その音の多様性が、これからの曲の多様性を物語っているように聞こえる。
しかし後ろの音が格好いいんだよなあ。


2
五月少女
アイドル!ってかんじの曲。まさに5月の爽やかさと太陽光を彷彿とさせる。ボサノヴァ?キマグレンとかが歌いそうなイントロ。
millstonesさん(石臼さん)はイントロで釘付けにされる曲が多い。
この曲大好物です。ミクの声とよく合う。サビよりメロのほうがすき。
通しで聞いて、女性性を感じるのはこの曲だけ。というか性別を感じるのがこれだけ。


3
Railroad Crossing
ぐみとルカのデュエット?曲。うむ。前後の曲の印象が強くてあんまり印象にない(ごめんなさい)。
ともするとスローなまったり曲になりそうなメロディでも、軽快にできるってことでしょうか。歌詞が悲しいものだから、よけい軽く、軽くと作られてるのではないかな。
サビが非常にキャッチー。



4
Arbitrary Utopia
階段状に下がってくる旋律。ちょっと迷宮チックな、RPGの神殿に流れそうな曲。
和音なしでピアノの主旋律が流れる。ポロポロいってるのがキレイ。インスト。


5
旅鳥クロニクル
ジャズ×ルカ=大人
しかし恋愛の曲ではない。意外。
理想郷という単語がいくつも出てくる。前の曲のタイトルも一部が理想郷。何か繋がりがあるのかしらん。しかし石臼さんの中に暗く横たわる現世に対する虚無感は何だろうね。



6
無意識の回廊
これねー実は意外と好きなんです。
次々と自由に転調して、何度も同じメロディーが現れるんだけど、それも不規則。
ボーっとしてるときって取り留めのないこと考えたり、何度も同じこと考えてたする。それを表したかのような曲。無意識の回廊とは良いタイトルです。
しかし短い!この曲の印象が強いので、インスト曲が全体に短く感じます。


7
7
誤植じゃないよ、「7」というタイトル。ちょうど折り返し地点ですね。
石臼さんの得意分野じゃないかなーって音があふれている。
後半の適度な疾走感が好き。
インストです。


8
計画都市
きたあああああああああ!!しかも音が変わってるううううううううう!!
ああ死ぬ、好きすぎて死ぬ。格好良すぎて意識飛ぶ。
ニコ動にあがってる物に比べ、音がよりクリアになってるようです。
前奏や感想のピアノのリズムが好き、とおもってよく聞いたら後ろで流れるピアノのリズム全部が好きだった。
ああ好きすぎてうまく書けない。本当に一つ一つの音のバランスが良い。
夜の高速できくとやばいです。テンションまじであがります。
ああこの曲と結婚したい。


9
noctiluca
前の曲で上がりすぎたテンションを適度に保ちつつ、次へとつないでくれるインスト曲。
これも格好良いなああああ
何となく、聖剣伝説2のダンジョンに使われそうな音。
後ろでプイプイッって鳴ってる音にじわじわハマる。


10
Theory of Nothing
かっこいい曲が続きます。まさに打ち込みといった疾走感と「スパーン」音。
この曲あたりで、石臼さんはピアノの使い方がとっても上手だからドラマチックな曲が多いんだ、とようやく気づく。
これも歌なし。



11
pseudoresurrection
インスト。続くねえ。
ゆっくりと変化していきながらバランスが崩れる、そんなイメージの曲。
まるで次に大きな転換を迎えるような、予感を感じる。
フェードアウトしながら小さなメロディが渡される…。


12
可能世界のロンド
渡されたメロディが拾われたのはこの曲のイントロ。
この曲には強く思うことがある。ちなみに初めてであった石臼さんの曲がこれ。
美しさの先にあるのは、刹那の儚さ。
淡々と進む中に、多くの感情と出来事が詰まっていて、でもそれは外からは見えない。美しい人形のように。見えないことが、その存在を儚く見せる。本当に、美しいという単語では表しきれない。儚い。だから初音ミクにしか歌えない。人間ではこの曲は歌えない。ほかのボーカロイドも、似合わない。ミクの感情の生まれない声でないと。

私がアルバムという一塊の表現作品を聞くときに意識するのが、このアルバムの中のどこが、中心になっているのかということ。
それは収録時間の中間点ということではなく、どこでこのアルバムの雰囲気が決定されるか、どこで盛り上がりの最高地点を作るのかということ。
ヒット曲が一曲しかない、駆け出しのシンガーソングライターなら、悲しいかな売れたその曲が中心になってしまう(そしてそれはだいたい一曲目か二曲目に持ってこられることが多い)。重鎮アーティストだと、3か5曲目という印象。
そういう目で黄昏ホリックというアルバムを見ると、その地点は計画都市のしびれるイントロではなく、7の時間の折り返し場所でもなく、ルカやメグの歌声でもなく、この可能世界のロンドという曲。その中でも特に「否定される」という歌詞で歌い上げられる瞬間。だと思う。
それほどまでにこの曲の存在感はちょっとすごい。
ある意味、この曲の後はエピローグに入ってしまった、そんな感じさえする。



13
黄昏ホリック
新曲。ぐみかな?
攻撃的なイントロとAメロ。
石臼さんの世界観を体現したかのようなタイトルと歌詞。
夏の暑い日の夕暮れ、太陽は地平線下へ消え去り、残された橙が青空と宇宙とに混ざる。これから訪れる闇を思ったときの胸の苦しみ。
この歌にもユートピアが登場するね。
これだけの空虚さと、退廃感とがあっても、この人の曲では必ず最後には明るく終わる。明日の夜明けを感じる。

うーん評価が難しい。大変好きな曲ではあるのだけど、可能世界のロンドの影響が強すぎて物足りなさを感じる。単独でヘビロテするとかなり印象変わる予感。


14
未来紀元歴元年
ぐみ?
終わりにふさわしい一曲。イントロやばいい。サビも良い。この曲の終わり方が大変きれいなんだよ。
歌詞とは裏腹に、どう考えても朝焼け前の、宇宙色と透明の間の空の色をしている。
もうだめ終わったといいながら、決して諦めていない澄んだ顔してる。ツンデレ?



15
とおもったらボーナストラックあった。
変わった曲逆再生してるみたい。
汚いのにきれいとはこれいかに。





石臼さんの曲は聞けば聞くほど骨抜きにされるというスルメ曲、いや蟻地獄曲ばかりなので、また聞き続けることで各曲の印象変わると思う。正直可能世界のロンドも、初聴では「ふーん」だったし。
しかし幅の広い人だとおもう。いろんなテイストの曲がはいってる。どんな音楽を聴いてきたんだろう。
どんな人なんだろう、millstonesさんって。


ちなみにジャケットの女の子ちょう可愛い。
そこも含めて大変好きなアルバムです。これで2000円弱なんだから有り難すぎて手先がプルプルするわ。
ありがとうmillstonesさん。


とらのあな通販で買いました。興味のある方は、ニコ動でもようつべでも一部の曲が聞けますので、是非是非聞いてみてください。