空太のそら言

隠れオタクのぐうたら

母乳が安定するまで100日の戦い

戦いが終わった訳では無いが、備忘録として書いておく。誰かの心の支えになればいいな。

 

当初予定していた産婦人科病院でなく、緊急で総合病院に運ばれて出産に至ったことは過去記事で書いた。もともとの病院は母乳推奨で産まれた直後から母子同室、母乳は必ず出るようにして退院してもらいます、というコンセプトだった。別にそれが良くて選んだ訳ではなく、たまたま一番近い病院だったから選んだだけだった。

が、実際に出産した総合病院は全く違うものであった。

そもそも産後こどもがNICUに入ったため、母子同室どころか直母をしたのが約1週間後だった。それまでは搾乳してそれをNICUに届けてもらっていたのだ。

初めてのお産、初めての搾乳で上手くいくはずがない。最初は1ccとれるスポイトを使って、なんとか0.1ccの母乳をひねり出したところからスタートだった。出てきた母乳を受けるためのカップも用意してもらったが、滴る程も出ない。滲む程度のそれをスポイトの先端でチュッと吸って終わりである。

看護師さんたちからは、夜の搾乳も頑張ってやってくださいねと言われるが、いかんせん搾乳に対するモチベーションを保つのが非常に難しかった。私も術後で全然動けなかったので、3日間ぐらいはこどもの顔を直接見ることすら出来なかったのだ。それでも深夜3時ぐらいに起きて絞って冷蔵庫に入れていた。

6日後、こどもがGCUというあと一歩で退院するという場所に移され、はじめて直母をすることができるようになった。

主人とふたりで授乳スペースへ行き、恐る恐る咥えさせる。新生児の口が小さすぎてなかなか咥えることができず、咥えてもほんの少し舌を動かしただけてすぐ寝てしまった。20分ぐらい格闘して、飲んだ量を体重計で測ると、わずか2gだった。

落胆したものの、搾乳でも2ccとるのはすごく時間をかけていたので、赤ちゃんすごいなと素直に思った。飲んでもらった方が搾乳するよりよっぽどいい。しかも、授乳すると子宮がすごく収縮するのがわかる(痛い )。人間の体の神秘を感じた。

 

私が退院した翌日にはこどもも退院となった。病院での最後の授乳では8g体重が増えていた。当然、ミルクを補足するように言われる。1回80ccあげてくださいねと言われ、初めての育児に震えながら家に帰る。

 

最初の夜、3時間おきにあげるミルクを上手く飲まなくて、大量にミルクを吐いて右往左往した。大量に吐くとお腹が空くのかすぐに泣いた。吐き戻しが怖くて少しだけミルクを作って飲ませる。まだ泣く。泣き止まない。3時間待てず、また少しだけ作って飲ませる。まだ泣く。また少し飲ませる。ようやく寝たのが夜中3時だった。主人は横でいびきをかいて寝ていた。一人不安に押しつぶされながら泣きながらミルクをあげた。また吐いたらどうしようとその日は眠れなかった。

 

そうして始まった子育て。母乳が少しは出るし、できれば母乳をあげたいと思っていた。母乳、ミルク、それぞれメリットもデメリットもあるが、私の動機は母乳をあげている方が月経の再開が遅いというものだった。できればこどもはもう一人は欲しい。できるだけ可能性を残していたい。すこしでも排卵を遅らせたい。効果があるかは知らないが、母乳をあげてこどもとコミユニケーションが取れる上に排卵が遅くなるのであれば、そうしたいと思った。逆にそれ以外の動機はなかった。それだけをモチベーションと考え、色々と調べてとにかく吸わせることが大切だと知りずっと授乳していた。

新生児は体力がない。少し出ないだけてすぐ諦めて寝てしまう。最初は「よっしゃ寝てくれた」と思っていたが、ベッドに置くと30分ももたずまた泣いてしまう。その繰り返しだ。

ずーっと吸わせていると、ときどき「ゴクゴク」と喉を鳴らすときがあった。もしかしてそれ以外の時はろくに飲んでないのでは…という可能性を感じながら、とにかく吸わせていた。

しかし一向に母乳が増える様子がない。

 

ネットで調べて桶谷式の母乳マッサージへ行ってみることにした。ここの施術師?助産師?と全く相性が合わなかったので、結局2回しかいかなかったが、有益な情報はいくつか得られた。

「ゴクゴク」はやはりしっかり飲めている時になるものだった。それが最低でも片乳で2回分、母乳が湧いてくるまでしっかり咥えさせること。哺乳瓶は母乳相談室という母乳育児のためのものを使っていたが、くわえさせ方が甘く、浅く吸うだけになっていたこと。乳首の根元までがばっと咥えさせる必要があること。ミルクの補足は時間と量を決めて臨むこと。夜寝る前に沢山飲むからと言ってあそこだけにあげているとバランスが悪いことなどである。

肝心のマッサージについては、1回目に行った時にはその後の母乳の出の良さに感動したものだが、2回目はむしろ直後はあまりでなくなったと感じた。マッサージすることで母乳をめいっぱい出させ、更なる生産を促すのが目的なのだろう。もともとめいっぱい吸わせていたら効果は限定的だ。

施術師の決めつけてくる態度もあって、2回行って終わりとした。料金は6000円、5000円ぐらいずつ払ったように思う。勉強代だ。

その時で一日400cc弱のミルクをあげていた。

 

そこからは深く咥えさせ、ゴクゴクを意識して、何度も何度も授乳した。家から出るのが困難な程だった。

また、市町村の無料育児相談を見つけ、そこに通って体重測定とアドバイスをもらった。

最初にそこに行けば良かったと思うほど、中立の立場から優しくアドバイスをしてくれた。しかも無料。

それからは毎週体重を測ってもらいつつアドバイスを受け、徐々に生活のリズムも出来てきた。

 

混合栄養で進んでいたが次第に母乳の割合が増えていった。

このまま混合で行こうかと思っていたのに、3ヶ月を過ぎる頃、哺乳瓶での授乳を嫌がられてしまうようになった。

手を替え品を替え時間も変えても全力で拒否される。母乳には吸い付く。しょうがないのでずっと吸わせることになった。

寝ても醒めても吸いっぱなしの状態。1週間ぐらいはおしっこも少なく不安でしょうがなかった。だが、あやすとご機嫌になるので、もしかしたら予防接種の副作用なのかもしれない(食欲減退)とも思っていた。

そうこうしているうちに、そこまで嫌がらずにミルクを飲むようになる。しかし、基本一日1~2回の補足。引き続き頻回直母で頑張る。

 

体重の増えはかつて程はないのだが、直母でももういらない、と顔を背けたり、途中から集中力がなくなる様子なので、これ以上飲む量を増やすことは出来ないだろう。

常にでは無いが目が合えば微笑むしあやすと声を出して笑ってくれるので、ご機嫌もいいだろう。おしっこは少ないと思うが、うんちはちゃんと出ている。

今は調子よければ2時間ごとの授乳にまでなった。ミルクは一日60~120ccだ。

ようやくここまできて、母乳育児の自信が出てきた。

今まで自分の体のことを信じられなかった。ミルク飲ませなきゃ、絶対足りてないといつも怯えていた。

今も足りてるとは思わない。なかなか出てこなくてこどもに怒られることもある。でも、それなりに出ていると思う。だからこれでいいと思う。

 

 

そうこうしているうちに離乳食が始まるのだ。あっという間だ。

人生の中でもほんの僅かな時間しか母乳をあげることは出来ない。こどもはこの愛しい時間を覚えていないのだろう。その分私が覚えている。焼き付けておく。

これからも戦いは続く。こどもと二人三脚で戦っていこう。