沈まぬ太陽5
- 作者: 山崎豊子
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2001/12/26
- メディア: 文庫
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うーん、ひどい。こりゃひどい。
山崎豊子はよくこの小説を書き切ることができたな。何の妨害にも会わなかったのだろうか。
さて、最後まで読み終えて感想は二つ。
恩地や国見会長のように、どんな苦境に立とうとも、信念を曲げずに歯を食いしばる者がいれば、かたや、汚職にまみれズブズブと黒色に染まっていく者もいる。
どちらも、一人ではできないということだ。当然、私欲をこらそうとする人間の周りにはそういう人々が集まってきていて、そういう風土を作っている。連帯責任のように逃げられなくなっている。
でもそれは反対側でも同じで、音痴は残された組合員のことを思って何度も堪え信念を曲げずにいるし、国見会長も差別的評価を是正し乗務員が一丸となって空の絶対安全を守って行ける日がくることを信じていた現場の人間のことを思うと、辞表を下げてしまうほどだった。
どちらも、周りの人間に対する気持ちから来ているものなのに、どうしてこうも感じ方と結果が変わってくるのだろうか。やはり私欲のためか、公益のためか、という違いなんだろうか。それともそれぞれの胸の中にある正義感の違いだけなのだろうか。だとしたら、誰にでも悪に染まる可能性があるということで、それは大変怖いことだなぁと率直に思う。
自分自身にやましいことのないように生きよう。
もう一つは、これをいまのJAL社員が読むと一体どう感じるのだろうかということ。ここまで書かれて、なお組織が治っていないのなら、それはもう日本の恥部である。一企業ではもう取り返しのつかないほどに穢されているのだろう。日本の社会全体がそれを隠している。だからマスコミは信用ならんのだよ…。
別にかねてから信じてたわけではないけど、だって彼らだって営利団体ですからね。そして、思想がありますからね。人間と金が介在する限り、隠したり暴いたりするでしょう。意図的に。公器だなんておもってないっすよ。
表を見せられたら裏側を、裏に、気づいたら表側を見るような気持ちで情報にらあたらないとね…。
でも、ネット社会の現代で、Googleに検閲なんてされたら、もう飼いならされるしかないんですけどね…。知らなきゃ、それはそれで幸せなのかしら。
しかし、山崎豊子は良く、無事で書いた。ありがとうございました。
日本人として、知っておかなければならない物語だと、思う。特に、事故の記憶がない世代は。
うーん、JALに乗りたくない。でも整備してくれる人や機長さんたちには頑張ってほしい。どうか、現場を大切にする社風に変わっていきますように。自戒も込めて。