空太のそら言

隠れオタクのぐうたら

金魚の夢を見る

おじいちゃん。ちょっと見ないうちに小さく小さくなっていた。
木の箱に入ってた。
沢山の人が集まりお経を唱えそして手を合わせた。
南無阿弥陀と手を合わせた。
葬式というのは残されたひとの気持ちを整理する場所だ。


火葬場というところに初めて行った。2時間ほどで納骨できるようになるらしい。その間ご飯を食べる。
考えてみれば火葬は相当えぐい。我々が米を噛み茶をすする間に、おじいちゃんの舌は炭になり内臓も焼き切るのだ。
人間の70%は水分でできていると言うし、焼き終えて骨だけになるのには生々しい時間が必要だ。父曰く、昔は墓場で薪をくべながら、一晩かけて焼いたという。


出てきたおじいちゃんは、もうおじいちゃんかどうかもわからないけど、骨のかけらになっていた。
炉に一緒に入っていた台がすごく熱くて、熱気で部屋が暑くなっていた。
もうそこまでくると、物質変化の連続性を感じることができず、ぷつりと泣く人はいなくなった。


趣味で金魚を飼っていた。色んな賞ももらったらしい。
叔父が、小学生の頃に飼いたいと言い出し、それがきっかけだったそうだ。




天国なんてないと思うけど、真実はひとつだから、私があると思えば存在する。
だからおじいちゃん、天国でも金魚の面倒見てください。そして、いつか私がそっちに行ったら、少し恥ずかしそうに、でもぶっきらぼうに、自慢してください。




目を閉じると、シフォンのような赤いヒレがひるがえる。
金魚の夢。
おじいちゃん。
ありがとうね。



享年80歳。