氷壁
- 作者: 井上靖
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 1963/11/07
- メディア: 文庫
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だろうと思ったんだよー途中からフラグたちまくりでしたやーん。
ってことで、古い本ですが井上靖を読み終わりました。初めて読んだが細部の描写の上手い人だな。
ネタバレしますので、まだ読んだこと無い人はお気をつけください。面白いから読んだ方がいい。割とマジで。
結局誰も救われない話ってことなんですが、小坂兄が死んだのも、結果的に自殺だったんじゃないかと思うわけです。それは魚津が危険を承知で美耶子への思いを断つために前進した結果命を落としたように、小坂兄も引き返すべきだったのにそうしなかった、できなかった。そんな気がしてなりません。
その行動のお陰で小坂妹は永遠の愛を手に入れたのだから、空虚です。
美耶子を忘れるために前進したってことは、そりゃ美耶子のこと忘れられないからしてたわけで、つまり美耶子のためなんですよね。でも、自分に向かって歩いていた事実が小坂妹に失うことのない愛情を与えた。生きて降りてきてたら、いつまでも魚津は美耶子が好きなんじゃないかって疑い続けなくてはならなかったでしょうからね。何もてに入れてないけど、何も失わなかった。
はじめの頃は読んでて退屈で、マドンナを争った男の友情物語ですかとか斜に構えてたんだけど、小坂兄が穂高の崖で一枚の絵になってからは俄然おもしろくなりました。そこからの展開は早かった。
文体も癖がなくよみやすく、噛むように読み進めることができた。
私は国文科でもないし学者でもないので、難しいことは分からないが、山の描写は生き生きとしていた。
最後魚津が単独歩いてるときなど迫力があった。
ナイロンザイルのエピソードが、程よく男女の生臭さを打ち消していて、陰湿になりすぎずに済んでいる。あれがなければまじで痴情のもつれで人が死んだって話になってしまう。
集中して文字を追うのは気持ちいいですね。
たまには昭和の本を読むのもいいなあ。自分も昭和の人間ですが。